溝田和紙−今に受け継ぎ、未来に紡ぐ八女手漉和紙

福岡県南部に位置する、自然豊かな八女市。この地は、八女茶で有名だが、もう一つの重要な伝統工芸品として八女手漉き和紙がある。清らかな矢部川の水と、豊かな自然に育まれた楮(こうぞ)を活かし、400年以上もの歴史を持つ和紙づくりが今も受け継がれている。


黙々と作業を続けるのは溝田俊和さん。八女茶の緑豊かな景色を背景に、福岡県南部を流れる矢部川沿いに佇む、九州最古の和紙工房「溝田和紙」を訪ねました。


そもそも手漉き和紙とは何なのか?

文字どおり、手作業で一枚一枚漉いた和紙のことです。

溝田さんの和紙は、文化財(対馬宗家文書や東京博物館関係)の修復や芸術作品の制作に欠かせない存在として、日本の歴史を未来へ継承する重要な役割を担っています。手漉き和紙は日本固有の伝統工芸であり、その修復技術は世界最高峰として評価されています。


匠の技法


ここ八女には400年の歴史を誇る和紙製法があり、この伝統的な技法で丁寧に仕上げられています。

和紙作りにおいて、最も技が光るのは漉きの工程です。
わずか数回、前後左右に動かすだけで、均一な厚みと強度を持つ一枚の紙が生まれます。そこには30年の経験が織りなす、感覚だけでは言い表せない深い技の重みが、一枚一枚に込められていました。



そもそも、原料は何か?

それは、楮の木です。昔は「かみそ」と呼ばれており、神に献上する布である紙衣や神麻(かみそ)の材料として使われていました。それから時代を経て「かみそ」が「こうぞ」という呼び名に変化したという説があります。


和紙が楮の木から作られる理由は明確です。楮にはリグニン(木材を形作る物質)が少ないからです。リグニンが含まれると紙は劣化しやすく、例えば新聞紙を日光に当てると赤く変色してパリパリになってしまうのもこのためです。

八女の楮は九州産で、その特徴は繊維が長く、互いにしっかりと絡み合うことです。これにより、通常の和紙を上回る強度を実現しています。


もちろん、準備工程にも職人としての細やかなこだわりが光ります。

溝田さんは、特に不純物の除去に時間をかけています。 表面の悪い繊維の赤い皮をナイフで一つ一つ丁寧に落とし、白い繊維だけを残しています。
また通常の和紙のように強いアルカリで炊くと繊維を傷めてしまうため、弱アルカリで炊いてるそう。


また「どのようなことを考えて和紙を作っていますか?」と質問したところ

「作品をそのままの状態で保存しなければならない(可逆性)。だから丁寧に手を掛けて作っていく。私たちで歴史を残していかなければならない、そのための一つのお手伝いをしている。」と溝田さんはおっしゃった。イメージとしては「木をそのまま紙にする感じ」らしい、、、

確かに、すべて手作業で化学薬品も使っていない原始的な工程からそのことが納得できた。





次世代への想い

海外にも魅力を伝える活動を行い、多くの見学者を迎える溝田和紙工房。今後の展望について詳しくお話を伺いました。


今後、工房をどのように魅せて行きたいですか?と質問したところ

工房の観光地化は望んでいません。ですが、八女の文化として、地域の発展に協力すべきだとは感じています。ただし、本当に和紙に興味を持つ方に来ていただきたいのです。特にアーティストの方々に見ていただきたいですね。実際、来訪者の大半はアーティストです。見学料は頂いていません。これも、観光地化を避けたいという思いからです。


また現在、韓国や中国でも「和紙」として紙が製造・販売されています。
そうした中で、日本の和紙ならではの素晴らしさをより多くの人に知ってほしい、と溝田さんは語りました。


400年以上続く八女手漉和紙。代々受け継がれてきた技法は、文化財を再び輝かせ、今となっては未来へと繋ぐ重要な役割を担っています。それは単なる紙ではなく、人々の手で織り成された日本文化の象徴といえるでしょう。






最後に職人の多い町として知られているこの街「八女」、その一因が八女手漉和紙にあると私は考えている。例えば提灯作りでは、和紙の柔軟性と強度を活かすことで、美しさと耐久性を両立させている。八女和紙は単なる紙製品ではなく、八女の伝統文化を形作り、職人たちの技術と想いを繋ぐ「基盤」として機能しているのだ。

神様と人間を繋ぐカミソとして始まった楮。それが和紙となり、過去から現代へと受け継がれてきた。その和紙は、様々な職人の手によって新たな文化を紡ぎ出し、八女という街を形作ってきた。そして今では、文化財の保存を通じて直接的に歴史を未来へと繋いでいる。このように、過去から現在、そして未来へと受け継がれるものが、互いに影響し合いながら、より大きな価値を生み出している。八女の和紙は、伝統を受け継ぎながらも、現代と未来を繋ぐ重要なものなのかもしれない。未来を紡ぐその姿は、まさに誇るべき文化の象徴といえる。八女から世界へ—和紙が繋ぐ未来への期待は、ますます高まっている。

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溝田和紙

住所:福岡県八女市柳瀬708−2

HP:

Maps:https://maps.app.goo.gl/sFduiW83cXe4thNCA?g_st=com.google.maps.preview.copy

TEL:0943-22-6087

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