江戸時代後期に始まり国の重要文化財にも指定されている「八女福島仏壇」。約80工程の中で、その魅力を引き出す重要な要素となっているのが、日本古来から伝わる漆塗りです。金属や化学塗料では実現できない独特の質感と光沢を持ち、その美しさから海外では漆が「japan」と呼ばれているほど。八女の漆職人が生み出す「japan」をどうぞご覧ください。
原点であり頂点の塗料。

この日訪れたのは、大きな提灯に「漆」という文字が目を惹く門構えの工房。漆工房・岩弥で、職人の近松敏夫さんの漆への情熱が光っていました。

近松敏夫さんは、伝統工芸士であり40年以上漆職人として研鑽を積み重ねてきたベテランです。7代にわたる漆職人の家系に生まれ、お祖父さんから数えて3代目となります。



漆は日本最古の塗料であり、最高級かつ最も優れた塗装材です。
耐久性、耐光性、耐熱性に優れ、防虫・防風効果があり、コロナウイルスも24時間で死滅させる特性を持っています。非常に高級な塗料ですが、体に優しいのが特徴です。
体にも環境にもやさしく、美しい最強の塗料だ。。。
漆はどこから?
漆の木を傷つけてその樹液を使います。漆の木は10〜15年ほど育てても、1本から採れる量は牛乳瓶1本分(約200cc)程度しかなく、その時点で伐採することになるため、とても貴重な素材なのです。

国産漆は岩手県が70%、茨城県が20%、残りが京都府で生産されています。国内での年間生産量はわずか1.5トンで、年間使用量25トンのうち21.5トンは中国産漆で賄っています。日本産の漆は中国産の5倍の価格であり、その貴重な国産漆は主に文化財の修復や制作に使用されています。
工房の中へ

実際に漆の作業をする工房にもお邪魔させていただきました。

漆塗りの工程は、基本的な工程だけでも18から25もの段階があるそう。。。
これらの工程の中で、職人たちが最も重要視し、細心の注意を払うのが下塗りの工程です。下塗りは、後の工程すべての土台となり、最終的な仕上がりの質を大きく左右するため、特に丁寧な作業が求められます。

上塗りの工程が最も細心の注意を要するそうです。
上塗りの作業は別室で行われています。その理由は、下地作業のスペースは問題ありませんが、漆を塗る場所では埃が大敵だからだそうです。


刷毛で塗った際履け目が出ないように、また埃がついてたら一つ一つ針で拾う。
漆の作業は1日1回しかできません。それは乾燥時間が必要なためです。漆は湿度70〜75%の環境でないと乾かず、乾燥には7〜8時間かかります。温度は20度が適温です。早く乾燥させすぎると塗りむらが出てしまいます。この途方もなく細かい作業こそ、まさに職人技でした。
じゃあ、入る時にあった大きなタンスは。。。。

このタンス使用された漆の量は約100万円になるそうです。。。漆自体が貴重な素材ですが、最も大きなコストを占めるのは職人の手間です。仕上がりは、鏡のように自分の姿が映り込むほどの美しさであった。

大型の家具は刷毛目が付きやすいため、入念な研磨後に漆を丁寧に刷り込んで光沢を出します。その光沢は鏡のように美しく、私の姿まで映り込むほどです。この最終仕上げには約25段階もの工程が必要となります。
道具へのこだわり
これだけ、繊細な漆塗り。近松さんが使う道具にもこだわりがみられた。

上塗りの工程で使う刷毛は、女性の人毛を使用しています。人毛は滑らかで適度なコシがあり、漆を塗るのに最適なのです。


へらは自分で手作りするそうです。木から自分の手に合わせて作ることで、より使いやすい道具になるとのこと。

漆塗りでは下塗りがそうだが、基礎を大切にし、一つ一つ丁寧に積み重ねていくことがなんでも大事しかし、そこを怠れば、それだけものにしかならない。と言う。
現代では、刷毛目も美しく仕上がる比較的安価な機械塗りが主流となっている中、手塗りにはどのような意義があるのか。
手塗りには、かけがえのない伝統工芸品としての価値が宿る。職人が一つ一つの工程に心を込めて塗り重ねることで、作品に魂が宿るのだ。
機械塗りでは表現できない手間と情が込められ、日常生活に温かみと癒しをもたらす。これが、何百年もの歴史を経て受け継がれてきた職人の技と精神が生み出す特別な価値なのだ。
日本最古であり、最も優れた塗料「漆」。職人たちが手作業で一つ一つ丁寧に塗り重ね、多くの時間をかけて作り上げる。その仕上がりは宝石のような美しさを持ちながら、どこか温かみのある趣を醸し出す。このような特別な存在であることから、漆は海外で「japan」と呼ばれるようになった。かつての日本を表した象徴たる存在。現代を生きる私たちは、この誇るべき「japan」を守ることに意味があるだろう。
====
漆工房 岩弥
Address:福岡県八女市高塚253−1
**WEB: https://www.urushikoubou-iwaya.jp/


